研究プロセスの省力化と再現性の担保
2026/06/19
この回では,分析環境を整えて,効率的に研究・レポート作成を行うための3つのツールを紹介します。
共通のテーマは省力化と再現性
Part 1|Positron
Part 2|Quarto
Part 3|GitHub Copilot
Part 4|Zotero
まとめ
Positron は,RStudioを開発しているPosit社が作った次世代のデータサイエンスIDE(統合開発環境)
| 観点 | RStudio | Positron |
|---|---|---|
| 対応言語 | R中心 | R + Python(対等) |
| UIの基盤 | 独自 | VSCode系 |
| 拡張機能 | 限定的 | VS Code拡張が使える |
| Gitとの連携 | 標準搭載 | より扱いやすい |
| AI補助の選択肢 | Copilotのみ対応 | Copilot以外のAIツールも拡張機能で接続可 |
| 安定性・成熟度 | 高い(14年の実績らしい) | 正式版(急速に発展中) |
VSCode(Visual Studio Code)とは
Microsoftが開発・無償公開しているテキストエディタ。
RStudioから乗り換えやすい
VSCodeの利点も得られる
パネルの配置は自由に変えられる。最初はRStudioと同じ外観に設定しておくと乗り換え時の抵抗が少ないかも?
インストールの流れ
brew install --cask positronwinget install Posit.PositronPart 1|Positron
Part 2|Quarto
Part 3|GitHub Copilot
Part 4|Zotero
まとめ
ところで,
これらは,Rstudio,Positronと同じPosit社が提供するQuartoというサービスで実現されます。
文書なら
html)docx)tex)pdf)スライドなら
html)pptx)pdf)その他にも
などなど色々な形で出力できます
また,
といった様々なプログラミング言語での分析結果を含めることができます
詳しくはQuarto公式ページ
Quartoのファイル(.qmd)は,3つのパーツが1つのファイルに同居している
① YAMLヘッダー
--- で囲まれた部分② Markdownテキスト
③ コードチャンク
や {python} で囲まれたブロックR Markdownを使ったことがある人へ
QuartoはRMarkdown(.Rmd)の後継・上位互換。書き方はほぼ同じで,R以外の言語にも対応し,単一の統一フォーマットになった。既存の.Rmdファイルもほぼそのまま動く。今から習得するなら絶対Quarto
Pythonでjupyter notebookを使ったことがある人へ
Quartoはjupyter notebookと似た構造。書き方はほぼ同じ。既存の.ipynbファイルもほぼそのまま動く。ただし,Quartoはjupyter notebookよりも出力の自由度が高い。あと,RもPythonも両方使える。
ここからは,
って話をした後で
について簡単に説明します
これってすごく非効率では?
というふうに作業を分割できます。
使い回しもしやすいです
文献の引用→文献リスト作成も自動でできるように設定可能
数式の挿入はワードよりはるかに便利
スライドのレイアウトはほぼ自動
普通?分析の結果はスライドや文書ファイルにまとめる。その際分析結果の図表をRなどの分析環境からコピーして貼る
通常分析はやってみて検討してやり直してを繰り返す
Quartoなら
データ分析において重要なことの一つが「再現性」
Quartoを使って分析からレポート作成までしておくとコードとその出力結果を一つのドキュメントにまとめることができます。
といったことが明確に記録される
Quartoでレポートやスライドを作るにあたって,分析コード(RとかPythonとか)以外に必要なのが,Markdown記法に関する知識
見出し
「#」の後に半角スペースで見出しになります。「##」のように増やすと小見出しになります。
箇条書き
「-」の後に半角スペースで箇条書きになります。
「1.」の後に半角スペースで番号付きリストになります。
太字と斜め字
「*」で囲むとその間の文字が 「斜めに」(⌘ + Iでも)
「**」で囲むとその間の文字が太字になります。(⌘ + Bでも)
コード
「`」で囲むとその間の文字がコードになります(⌘ + Dでも) 「```」と打つとコードブロックが作れます
数式
「$」で囲むと数式になります : \(y = ax +b\)
「$$」で囲むと真ん中寄せの数式に
\[y = ax +b\]
横線
「-」を3つ連続で打つと横線が出ます
完成したら,Previewボタンを押す
Part 1|Positron
Part 2|Quarto
Part 3|GitHub Copilot
Part 4|Zotero
まとめ
GitHub Copilot は,GitHubとOpenAIが共同開発したAIコードアシスタント
コメントから自動生成
エラー・修正の補助
学生向け:GitHub Copilot Student
2026年4月以降,新規申し込みが一時停止されている場合があります。申請前に公式サイトで最新状況を確認してください。
Copilot Studentプランでは,主要なAIモデルを無料で切り替えて使える
Studentプランで使える主なモデル
Copilotの画面からモデルを選び切り替えて使える
Studentプランの制限
コード補完は使い放題なので,データ分析のコード記述には十分強力。最新の対応モデルはGitHub公式ドキュメントで確認。
Ollama を使うと,AIモデルを自分のPC上で完全ローカルで動かせる
Ollamaとは
主なモデル:Qwen, Llama, Gemma など。その中にも大きさがたくさんあるので自分のパソコンにあったものを選ぶ。
ローカルモデルをPositronで使う
ローカル実行のメリット
Part 1|Positron
Part 2|Quarto
Part 3|GitHub Copilot
Part 4|Zotero
まとめ
Zotero(ゾテロ)は,文献を収集・整理・引用するための無料の文献管理ソフト
「論文・レポートで参考文献を記載する」作業が自動化する
今までのワード・パワポでの手順…
→ 一文献削除または追加するたびに全部やり直し…
Zotero + Quartoだと…
[@Sakuma2024] と書くだけ主な機能
なぜZoteroか
ZoteroとQuartoを組み合わせると,引用→文献リスト生成を自動化できる
連携の流れ
bibliography: references.bib を1行追加[@著者年] と書くだけで引用が挿入されるこれで不要になること
RStudio / Positronのビジュアルエディタでも直接Zoteroの文献を検索して挿入できる(別途設定不要)。
Part 1|Positron
Part 2|Quarto
Part 3|GitHub Copilot
Part 4|Zotero
まとめ
| Positron | Quarto | GitHub Copilot | Zotero | |
|---|---|---|---|---|
| 役割 | エディタ(分析環境) | 執筆・出力ツール | コード補助AI | 文献管理 |
| 何をするもの | R/Pythonを書く場所 | レポート・スライド作成 | コード提案・補完 | 引用・文献リスト自動化 |
| 再現性 | △ | ◎ | △(要注意) | ◎ |
この4つを組み合わせると,分析から発表資料まで効率的に作れる環境が整う
試してみる価値は十分あります。まずはQuartoから始めて,慣れてきたらPositronやCopilotにも手を伸ばしてみてください。
今回の授業で紹介した Quarto を実際に使ってみよう。
第10回の課題を,.qmd ファイルで作成・Renderして提出してください。
case2.xlsx は企業の財務データです(第10回で使ったものと同じ)。
やること
.qmd ファイルを作成case2.xlsx を読み込み,パネルデータに加工するコードをコードチャンクに書くRender ボタンを押す.html ファイルを提出完成イメージ(目標のデータ形式)
| shop | shop_id | 売上高 | 売上原価 | yearmonth |
|---|---|---|---|---|
| A | 20 | … | … | 1604 |
| A | 20 | … | … | 1605 |
| … | ||||
| B | 21 | … | … | 1604 |
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